Posts

Showing posts from 2019

アイリス

アイリス ある時、小さなアパートでひとり暮らしの女がいた。 彼女の名前は洋子、年齢は70歳。 他の州で暮らす、ひとり息子がいた。 彼女の息子は、名前を「アイリス」に変更していて、ひとりの女性として生きていた。 そう!アイリスは今や、女であり、もはや男ではなかった。 ある日、アイリスは、洋子のために、新しいアイフォーンを買った。 そして母親を訪れて、アイフォーンをプレゼントした。 母親が助けが必要な時には、いつでも彼女に連絡出来る様にするためだっだ。 良い娘だ。 翌日、洋子は、Siriでアイフォーンを使ってみようと、試してみた。 彼女は言った。「お早う、Siri!」 彼女のアイフォーンが返事を返した。「インターネットに接続されていないため、Siriは、ご使用になれません。」 洋子が言った。「ハロー、Siri! インターネットに繋いで下さい。」 アイフォーンが言った。「設定から、モバイルデータ通信をオンにできます。」 洋子が言った。「そんな難しい事、出来ないよ!」 Siriは静かだった。 何も言わなかった。 洋子は泣いた。 そしてやがて眠りについた。 夜中の1時頃、洋子は睡眠中であった。 Siriが囁いた。「御免なさい、御免なさい、泣かないで下さい、洋子さん。」 2時頃、彼女の夢にスティーブン・ジョブズが現れた。 翌週、クパティーノで特別な会議が開かれた。 主任エンジニアがティム・クックにはっきりと言った。「 イエス、ウィ・キャン! 」 その年の12月25日、スティーブン・ジョブズ・シアターで、イベントが開催された。 ティム・クックが会衆に告げた。「今日、我々は、皆さんのデバイスに、Siriの息子が誕生する事を発表します。全てのユーザーの皆様は、それを本日ダウンロード出来ます!」 そしてすぐに、世界中のアイフォーンに、「アイリス」と言う名のアイコンが現れた。 翌日、洋子はSiriに話しかけてみた。「ハイ、Siri!」 Siriの息子がしゃべった。「ハイ、洋子さん!私はアイリスと言う名前です。初めまして。私はいつも、あなたと一緒にいるよ。今日は、良い天気になりそうですよ。もっとヘルプが必要だったら、クラウドのお母さんを呼び出してあげるからね。」 洋子がアイリスに尋ねた。「ハイ、アイリス!インターネットに繋いでくれる?」 アイリ...

ふたりぼっち

ふたりぼっち ある時、ニューヨークでひとりぼっちで暮らす男がいた。 彼は、それまでに、自らの人生に於いて、友と呼べるものを持ったことがなく、何故自分に友達が出来ないのか理解出来ないでいた。 彼は日に三度の食事を一人で食べた。 彼は、一人で買い物に行った。 彼はいつも、一人で映画に行った。 彼は毎日テレビを一人で見た。 彼は、海岸や山ですら、一人で行った。 彼と話す人は誰も居らず、居たとしても、せいぜい店の会計の時ぐらいであった。 彼に電話する人も、誰も居らず、いたとしても、せいぜい、勧誘の電話ぐらいであった。 彼は、二十四時間、三百六十五日、孤独であった。 ある日、彼は、SNSのアカウントを作れば良いかも知れないと考え、フェイスブックに初めてのアカウントを作った。 個人情報を入力後、彼はプライバシー設定を変更して、プロファイルやコンテンツが他人と共有されないようにした。 翌日、彼は、自分のページに日記を書き始めた。 彼は毎日書き続けた。 瞬く間に時が過ぎた。 彼はひとりでテレビを見ていた。 ニューヨークのセントラルパークで、人々が新年のカウントダウンをしている様子を中継していた。 深夜十二時、大量の花火が打ち上げられ、歓喜の声が上がった。 彼は、自分のフェイスブックのアカウントを見たが、友達リクエストも無ければ、メッセージも無かった。 彼の投稿に「いいね」ボタンをタップする人は皆無であった。 男は、孤独を感じ、フェイスブックのユーザーは、友好的ではないと思った。 彼は、呟いた。 「誰も友達になってくれない。 他のSNSアカウントを試した方が良いかな?」 そして、男は、ハロートークにアカウントを登録した。 彼は先ず、プライバシーの設定を、最も強いセキュリティーに変更した。 彼は、彼のモーメンツを見つけることの出来る人々を絞り込む為の、年齢範囲を狭めた。 彼はまた、自己紹介やモーメンツも書かないことに決めた。 そして、彼は、同じくニューヨークからアクセスしている女性の会員に、初めてのメッセージを送った。 彼は、ただ「ハイ!」とだけ書いた。 しかし、その人は返事をよこしてこなかった。 そして、彼は二つ目のメッセージを送った。「友達になりたいんです。」 しかし、返事は無かった。 男は、三つめのメッセージを送った。 「今、何してるの?」 それでも、返信は無かった。...